危険物を収納する容器への表示方法


■該当する法令による表示義務
 海上輸送上の危険物に該当する貨物
 
危険物船舶運送及び貯蔵規則(危規則) 第2編 第1章 第8条関連


海上輸送上の危険物に該当する場合は、以下の表示が必要になります。

1.該当する危険品の「標札(ラベル)」

 危規則に別途規定がある場合を除き、輸送物には収納されている危険物の危険性分類・項目(Class)を示す正標札を貼付しなければなりません。また、当該危険物が副次危険性を有する場合には副標札も貼付しなければなりません。
 それぞれの危険物に要求される正標札及び副標札は危規則告示別表第1(危険物リスト)の等級欄及び副次危険性等級欄に規定されています。


<標札の例>



 引火性液体類
FLAMMABLE LIQUID

分類3
CLASS3



引火性液体の入ったドラムには3種類の表示があります。

※平成27年1月1日より「ふちの内側の線の太さは2ミリメートル以上とする。」事となりました。
(平成28年12月31まで移行期間)


2.該当する危険品の

「正式品名(Proper Shipping Name) 」
「国連番号(UN Number) 」


右の図では、

 正式名称:FLAMMABLE LIQUIDS, N.O.S.
      (Organosiloxane)
 国連番号:UN1993

正式品名と国連番号が書かれたラベル


※「正式品名」は「商品名」ではないので注意が必要です。IMDG Code、危規則等に記載されている品名を記載します。N.O.S.は「その他」を意味しますので例では「正式品名」の後に括弧書きで専門的名称又は正しい化学名等を記載しています。


3.危険物の輸送に適切な容器であることを示す

「UNマーク」


右の図では、左から
 丸印の中にunの文字:
  「UNマーク」であることを示す
 1A1: 容器の種類
 X : 容器等級
 1.8: 収納出来る液体危険物の最大比重
 300: 水圧試験圧力(キロパスカル)
 03 : 製造年(西暦の下2桁)
 J  : 容器の承認国(国際自動車登録識別記号)
 NDS: 製造者の略号

UNマークの印字例



例ではドラムに直接印刷されています


 危険物を収納する小型容器等へ表示する国連番号及び「UN」の文字の高さは12ミリメートル以上としなければなりません。但し、
@許容質量が30キログラム以下(許容容量30リットル以下)であって5キログラム(5リットル)を超える小型容器等の文字の高さは6ミリメートル以上の大きさ。
A許容質量(許容容量)が5キログラム以下(5リットル以下)の場合は適切な大きさ。
とする事ができます。
「船舶による危険物の運送基準等を定める告示第7条の3」をご参照ください。


 海上輸送上の危険物に該当するが「少量危険物扱い」となる貨物
 
(危険物船舶運送及び貯蔵規則 第2編 第1章 第11条)

少量危険物とは
 IMDG CodeのDangerous Goods List(或いは危規則別表告示第1)の少量危険物の欄に容量が記載されている物質で、それらを組合せ容器(内装と外装からなるもの)に収納し、内装、外装の収納量が当該少量危険物の許容量以下の輸送物です。


少量危険物の免除規定
・「容器検査」の免除。
・「標札表示」の免除。
・「隔離等」の免除。隔離を必要とする危険物同士でも、同一コンテナに収納可能です。
  ※ただし安全性には充分にご注意下さい。


少量危険物として扱う為の条件
・危険物船舶運送及び貯蔵規則の別表1の「少量危険物」の欄に示されているもの。
 ※エアゾール等を除く。
・組合せ容器である事。(例:内容が缶、外装がカートンで梱包されている)
・「少量危険物」としての外装表示がある事。
・外装の総質量が30キログラム以下であり、「内装の容量もしくは質量」が、
 危険物毎に決められた規定以下である事。


少量危険物の表示規定
・ひし形の寸法は通常は一辺が10センチメートル以上でふちの太さは2ミリメートル以上。
・容器が小さい場合は、一辺が5センチメートル以上でふちの太さは1ミリメートル以上。

LQM


 海上輸送上の危険物に該当せず国内の「消防法」のみに該当する貨物

 海上輸送上は普通品扱いとなるので、危規則での表示義務はありません。


 

 


■「消防法」と「危険物船舶運送及び貯蔵規則」(危規則)の違い

  危規則 消防法
適用範囲 船舶による危険物の運送及び貯蔵、
並びに常用危険物の取扱いについて規定
日本国内における危険物の貯蔵、取扱いに
ついて規定
主 旨 危険物の船舶による運送について、
安全運送基準の詳細を定める。
危険物に起因する火災等の災害から
公共の安全を確保する。
内 容

危険物船舶運送及び貯蔵規則
船舶による危険物の運送基準等を定める告示

消防法
危険物の規制に関する政令
危険物の規制に関する規則
危険物の試験及び性状に関する省令
危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示
火災予防条例

危険物

危険物告示該当分類

クラス1 火薬類
クラス2 引火性高圧ガス
クラス3 引火性液体類
クラス4 可燃性物質・自然発火性物質・
     水反応可燃性物質
クラス5 酸化性物質・有機過酸化物
クラス6 毒物・病毒をうつしやすい物質
クラス7 放射性物質等
クラス8 腐食性物質
クラス9 有害性物質

法別表該当品目

第1類 酸化性固体
第2類 可燃性固体
第3類 自然発火性物質及び禁水性物質
第4類 引火性液体
第5類 自己反応性物質
第6類 酸化性液体

外装表示 通常
・標札、正式品名、国連番号

少量危険物
・標札、正式品名の代わりに国連番号を
 表示した「ひし形」

一般容器
・品名、危険等級、化学名、数量、注意事項

組合せ容器
・外装のみ、品名、数量


■梱包方法による表示義務
 単一容器に危険物が収納されている貨物

 
 貨物の外装に「外装表示」が必要

 1.「標札(ラベル)」
 
2.「正式品名」「国連番号」
 
3.「UNマーク」



 オーバーパック(梱包)している貨物


1.梱包された容器の表示が見える場合

・梱包されているすべての容器に表示が必要。
・原則、梱包の外装に表示の必要はないが、CFSによっては外装表示を求める場合もあるので事前の確認が必要。


2.梱包された容器の表示が見えない場合

・梱包の外装に表示が必要。
・内装がUN容器でも、外装がUN容器でない場合は、外装に「OVERPACK」表示が必要。


※平成27年1月1日より「高さ十二ミリメートル以上の大きさで 」表示する事となりました。
(平成28年12月31まで移行期間)

 オーバーパック表示が必要な場合
容 器 内 装 外 装 OVERPACK
表示
備 考
単一容器 UN容器 不 要 ドラム缶・一斗缶など単体の包装
UN容器でない 輸送不可 少量危険物でない場合は輸送出来ない
UN容器への変更が必要
組合せ容器 UN容器でない UN容器でない
UN容器でない UN容器 不 要 例)UN容器でない缶をUNカートンで梱包
UN容器 UN容器 不 要 例)UNポリ容器をUNカートンで梱包
OVERPACK UN容器 UN容器でない 必 要 例)UNドラムをケースパレット梱包
※表示の要否に内装・外装の数量は関係しません。UNドラム1本を1カートンに入れても表示は必要です。
※英文で高さ十二ミリメートル以上の大きさで”OVERPACK”と表示します。
※色・書き方(手書・印刷)の規定は特にありません。

 


■危険物FAQ よくある質問
「一般の危険物」と「少量危険物」を中身の見えないケースに一緒に梱包した場合の表示は?
→ それぞれに必要な表示を、オーバーパック(梱包)の外装に行います。
「普通品」と「危険物」を中身の見えないケースに一緒に梱包した場合の表示は?
→ 危険物に必要な表示を、オーバーパック(梱包)の外装に行います。
ラップでパレット梱包してある。中身の表示は一部しか見えないが大丈夫か?
→ 内装にきちんと表示があり、一部でも外側から見えれば、オーバーパックの外装に危険物の
  表示は必要ないのが原則です。
  ただし、船会社によっては中が見えていても、容器及びオーバーパックの外装への表示、
  並びに「OVERPACK」表示を要求される場合があるので事前の確認が必須になります。
国連番号、品名の表示方法(サイズ・色)に決まりはあるのか?
→ 以前は決まりがありませんでしたが、文字の高さなどが規定されている物が出てきました。
  また、印字品質に関して「表示は海水に3ヶ月浸された場合であっても消えるおそれの
  ないもの」と規定されていますので市販されているラベルを利用するのがベターです。
ケースマークに品名、国連番号が入っていた。改めて表示した方が良いのか?
→ ケースマーク内に表示されていても内容が正しければ問題ありません。
品名が日本語なら表示されているが英語にした方が良いのか?
→ 表示する言語に関して、日本語名(本邦各港間において運送する場合に限る)又は英語名
  と規定されています。したがって国外への海上輸送の場合、品名表示は英語名とする必要が
  あります。
どのような「化学品名称」「国連番号」「標札」を表示するのか何を見て決めるのか?
→ 荷送り人の責任において危規則告示別表第一等を確認して決定することになっています。
  もちろん、経験豊富な当社営業担当がお手伝いいたします。
海洋汚染物質(MARINE POLLUTANT)に該当するかは、どこで判断したら良いのか?
→ 「危規則告示別表第一の品名に肩文字「P」又「PP」が付されているもの。
  及びそれらの物質の混合物であって、その濃度がそれぞれ10%または1重量パーセント
  以上のもの」がMARINE POLLUTANTに該当します。
  収納する容器の外装に「MARINE POLLUTANT」マークを表示することが必要になります。
  少量危険物には「MARINE POLLUTANT」該当品であっても容器への表示は必要はありま
  せんが、少量危険物を収納したコンテナには「MARINE POLLUTANT」マークを表示する
  必要がありますので連絡が必要です。
MARINE POLLUTANT
 
■危険物を船積する場合の注意点
 危険物を船積する場合には、梱包方法、表示方法、積載方法や隔離方法など実に様々な規制があります。 船積み前の、保税倉庫やコンテナヤードでの蔵置や荷扱いについても、関連する国内の法律の規定により 規制を受ける場合があります。

  危険物の船積を計画する際には、正式品名、IMCOクラス、UNNO.等の危険物の明細を正確に把握し、 国内の輸送や蔵置、船積みに関する規制があるかどうかを事前に確認し、要件を満たしておく事が非常に 大切になります。

  また、輸出する国や本船が輸送途中で立ち寄る国で、危険物が輸送に関する規則を受けるかについても、 同様に事前に調査する必要があります。


  日本国内では危険物に該当しなくても、海上輸送上、通過国や仕向け先の国の国内法などで危険物として 扱われる場合があり、その逆の場合もありますので、輸送経路を総合的に検討する事が危険物をトラブル 無く輸送するための大切な準備になります。
 
 
 
 
 
 
 


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